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無くなった自転車戻ってきたというただそれだけの事

31 1 月 2000 No Comment

昨年の9月頃だったか、自転車が盗まれた。
家の前に置いてあったのだが、修理したその次の日に突然、無くなっていたので、妻と残念がった。
その自転車は友人のA君から結婚祝にといただいたものだったが、ちょうどその頃A君といろいろとあったので、まぁしかたないかとあきらめた。それに、僕の住んでいた代官山は、夜でも若者がフラフラしているところで、誰かが家に帰ろうと思って、持っていったというような事は想像しやすいことだったのだ。

ところが、今年になって、これも突然、警察から電話があり、自転車が見つかったという。しかも、小田急線の豪徳寺駅の近くの赤堤というところの秋定さんというお宅の庭に鍵がかかったまま放置されていたということだ。鍵がかかったままという事は、誰かが、そのまま代官山から豪徳寺に乗らずに運んだということだ。不思議な事もあるものだ。

僕はそこの派出所の海老沢という巡査にお礼の電話をし、次の日曜日に自転車を取りに行く約束をした。海老沢は、いかにも平和な住宅街の派出所の巡査という感じの話し方で、「よかったですね。」と電話の向こうで過剰に喜んでいた。他人事なのに。おそらく、善い事をする事に生きがいを感じるタイプの人なんだろうと思った。
その日、パソコンを開いてみると、あのA君からメールが入っていた。これも突然であった。僕はさっそく、電話をかえし、その週の週末に会う約束をした。そして、僕は頭の中で、自転車の発見とA君との再開を繋げたのであった。
日曜日が来て、赤堤交番まで自転車を取りに行った。何故か海老沢は不在だった。別の巡査に秋定さんのところに、電話してもらったが、こちらも不在らしく、誰も出なかった。僕は自転車をこいで田無まで帰った。予想では3時間くらいかかると思われたが、なんと1時間半くらいで田無までたどりついた。途中、青梅街道で一人の老婆から道を聞かれた。

老婆「ここは青梅街道ですか。」
僕 「そうですよ。」
老婆「それじゃあ、私はこの道を行けばいいんですね。」
僕 「....多分、そうです。...」

次の日、海老沢から電話があった。「まさむねさん、通信本部にお知り合いがいるんですか。そんなに気をつかってもらちゃってこまりますよ。ははは。」こちらは何もしていない。全く、意味不明でご機嫌な海老沢だった。僕は、「いや、とんでもありません。」とよく分からないながらも、当たり障りのない応対をした。海老沢は、「それじゃ、かぁちゃん(妻のらしい)の方か。」と言って、電話を切った。僕は取り残されたような気がした。その日、妻に確認をしたところ、海老沢から全く同じような電話があったという。海老沢は妻に対しても「それじゃとうちゃんの方か。」と言って、電話を切ったらしい。謎は残った。
結局、妻の方から、秋定さんにお礼のタオルと手紙をだし、この件は終わるはずだったが、昨日、その秋定さんからお礼の電話が入った。「ご結婚祝いの自転車、見つかってよかったですね。実は、うちには痴呆の母がいて、その母がこの自転車を自分のものだと思い込んで、本当に毎日毎日、磨いていたんですよ。」と話していた。

僕は、ちょうど麻雀をしていたのだが、その手が止まった。ちょっと不気味な感じがした。

まさむね。

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