白鵬にダメージを刻んだ怪力把瑠都の来場所が楽しみだ
朝青龍が白鵬との優勝決定戦を制し、24回目の幕の内最高優勝を決めた。
ものすごい気迫だった。本割りで白鵬に一方的に攻め負けた時は、二人の力の差を改めて感じさせたかと思ったのだが、さすが朝青龍は歴戦の勇者だ。優勝決定戦では、頭をつけ、左の上手を引きながら、右からのすくい投げで白鵬を投げきった。
解説の北の富士さんの話だと定石だと左からの上手投げを出すべきシーンだったらしいが、そこを逆に右からすくった朝青龍の自在さ、勝負に対する勘のするどさ、これはおそらく格闘家としての天才だからこそなせる技なのだと思う。
さらに言えば、勝負が決まった後の朝青龍の表情がよかった。悔しい時は本当に悔しい顔になり、嬉しい時は本当に嬉しい表情をするそんな朝青龍の純真さが出た一瞬、人によっては、ガッツポーズは土俵を降りてからすべきとの意見もあるだろうが、そういった道徳をはるかに上回る喜びのパワーが国技館を包み込んだ瞬間であった。
ちなみに、優勝決定戦の後、花道の奥で待っていたど派手な装束を身に纏った長渕剛が朝青龍に抱きついていた。この二人、友達だったのか。あの後、優勝パレード、NHK出演の後、飲みにでも行くのだろうか。朝青龍と長渕剛、さらにその親友の清原や細木数子などが加わりでもしたら、一体、どんな飲み会になるのであろうか。平均気温が高すぎるぜ!濃過ぎるぜ!見たいような見たくないような...
それにしても、今場所の展開は、今年の初場所と全く同じであった。それは、全勝の朝青龍と1敗の白鵬が千秋楽で対戦し、本割りで白鵬が圧勝した後の決定戦で朝青龍が勝つという点でそうなのは誰の目にも明らかであるが、それとは別に白鵬の1敗の仕方が同じだったのである。
思い起こせば、初場所、白鵬が敗れたのは日馬富士だったが、実はその前日の把瑠都戦でがっぷり四つの大相撲を演じていたのだ。把瑠都がその白鵬戦に関して聞かれて「がっぷり四つになればなんとかなると思った」と大言壮語したあの一番だ。
白鵬が翌日の日馬富士に不覚を取ったのは、前日の把瑠都戦での疲れが残っていたのが敗因だったのは誰の目にも明らかであったのである。
同様に、今場所、僕は残念ながら見逃してしまったのだが、把瑠都は再び白鵬と、40秒近くの大相撲を取ったという。
そして、白鵬は、その次の日に翔天狼に一瞬の隙をつかれて前のめりになってしまったのだ。これも、前日の把瑠都戦が白鵬の体に大きなダメージを与えていたのではないのだろうか。
実はその後の数日間、白鵬は自分の相撲が取れなかった。いつもは、立会いするどく踏み込んで、アッという間に自分の得意な体勢に持ち込み、いつの間にか相手を諦めさせて勝つという本来のスタイルとは程遠い、むしろ、朝青龍が得意とする一瞬の勘と運動神経で相手を負かすという、よく言えば、格闘技的、悪く言えばバタバタした戦いの日々が続いたのであった。
把瑠都おそるべしである。今場所、五大関を連破し、12勝を上げた成績は、勿論、申し分ないが、僕はそれ以上に白鵬の体にダメージを残す、その底力にこそ把瑠都の凄みを感じたのであった。おそらく、来場所は関脇に上がり、大関を目指すであろう。白鵬や朝青龍のようなピリピリするような精神的な厳しさは見られないが、それはそれで仕方が無い。恵まれた肉体と体全体から発散されるそのおおらかさを持ち味としたニュータイプの大関になってほしい。
この把瑠都の陰に隠れて、持ち味を発揮できなかったが稀勢の里だ。しかしまさか負け越すとは思ってもみなかった。しかも負け方が悪い。把瑠都に上手を引き付けられ、腰砕けになり、そのまま土俵外にほうり投げられてしまったのだ。
現時点で日本人新大関に最短距離にいる男だと思っていただけに残念だ。ここのところ、いい場所と悪い場所との落差が大きすぎるのが気になる。自分の型がまだ無いのが安定感を欠く原因なのだろうが、こんなところで負け越している場合ではない。それほど期待が大きいのだが...
残念といえば、安美錦の負け越しも残念だった。それでも9日目まで2勝7敗だったのを千秋楽で負け越したとはいえ、7勝したのは立派だ。三役からは陥落するだろうが、来場所もいい位置をキープできるだろう。今場所、7勝のうち、3勝に審判物言いがついたが、それほど土俵際のしぶとさを発揮したということでもある。怪我で思うような稽古が出来ずに臨んだ今場所ではあるが、持ち味は出したとの評価は与えたいと思う。
玄人受けする「浮世雲」風情相撲は来場所も楽しみだ。
その他、さらに残念だったのが琴欧洲だ。先場所は13勝したため、今場所は重要だった。優勝争いに食い込みでもすれば来場所は横綱にも挑戦できる立場だったのだ。7日目の鶴竜戦でとったりでころがされたのが痛かった。これは鶴竜を褒めるべきなのかもしれないが、この日を境に調子を落とし、結局は9勝しか出来なかった。来場所、ぜひとも、捲土重来を果たしてほしい。
いずれにしても、秋場所は終わった。千秋楽の最後の一番で横綱同士が優勝を争うというある意味、最高の締めを見せてくれた。鳩山由紀夫の総理大臣杯授与は放映時間から漏れてしまったが、きっと、小泉首相による貴乃花への授与式に並ぶ名場面になったに違いない。
権力の頂点に上り詰めた男と力士の頂点とのツーショット、これはこれで文化人類学的にも意味のある「絵」なのかもしれないとちょっと思った。
まさむね





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