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箱根のリゾートSPAでつくづく時間という買い物について想ったこと

9 12 月 2009 No Comment

先々週末、箱根の某リゾートホテルに家内と一緒に宿泊に出かけた。ぼくの目的はリハビリを兼ねて温泉に浸かること、家内は以前から行ってみたいホテルだったらしいが、結果としてはアロマトリートメントを施術してもらい大いにリラクシングできてご満悦だったようである。因みに彼女自身も自宅でアロマを施術しているアロマセラピストである。ぼくにとっては大江戸温泉通いの延長としての温泉療養の意味合いもあった。そこは強羅温泉のエリアなので温泉の質も格段によかった。

今回上記ホテルに行ってとても新鮮に感じたことがある。そのホテルはいわゆる世界に冠たる一大ホテルグループであり、その雰囲気といい宿泊施設の上質さといい、ホスピタリティーの良さは言うまでもない。ぼくがここであえて上質といっているのは、時間の邪魔にならない、邪魔をしないというほどの意味もある。とても有難かったのはそのホテル内を丹前に浴衣姿で闊歩できたことである。ホテル自体は骨の髄までリゾートホテルでありきわめてモダンな作りであった。

ふつうそんなモダンなホテルのなかを浴衣で歩くことは厳禁といわれても致し方ないとも思えるのだが、そのミスマッチがいわゆる温泉旅館じゃないところで許容されていたことがとても新鮮だった。極端な言い方をすればドレスアップしたカップルのなかを浴衣姿のおじさんが歩いているのだから。ホテルの品位にこだわるやり方もできるわけだ。だがホテルがその縛りを設けなかったのは、やはり温泉に入る人たちのことを考えてだろうな。なんといってもやはり浴衣で温泉に行くほうが便利だからだ。

それから、吹き抜けのリビングフロアーの天井から長い筒のような煙突が下がっていて、その下に薪がくべられた暖炉があり、その爆ぜる音を聞きながらゆったりできることもとてもよかった。ふつう暖炉といえば部屋の隅のほうにあるものだろうが、そこではちょうどフロアーの真ん中に位置するように暖炉が設計されており、寛ぎにきた人たちが取り囲むようにしてその暖炉の火を眺めることになるのだ。グラスを一杯傾けながら、いつまでも飽きることなくその火を眺めながら談笑している泊り客のすがたも絶えなかった。こうした何でもないような設計にみえて、客本位への気配りといい、寛ぎを演出するその意匠の心づくしといい、やはり上質であったといえるだろう。
結局非常に月並みな当たり前の感想になってしまうのだが、サービスとかホスピタリティーとかいろいろな御託を並べても、ぼくらは詰まるところこのホテルでの「時間」を買いにきているのだ。その対価としてお金を払ってゆくのである。その意味では時間こそがやっぱり一番高価なものだ。明日死ぬひとにとって今日という時間ほど何物にも変えがたいものはない。

まさむねさんが{「ここはウソで固めた世界でありんす」とは僕らの台詞だ}のなかで語っているように、「世界に対する違和感、それは現代人に特有の感覚なのだろうか。それは、本当の自分はどこか別の場所に居るべきであり、今、ここに存在するのはウソの自分だという感覚」だけがたしかなものなのかもしれない。だとするなら、そうした不確かさのなかでヒトはより確からしいなにかにスガルしかない。それが唯一根っこのような時間というものなのだろうか。
最近フランスで日本ブームだといわれていると前回書いたけれど、こうも言えるかもしれない。いまフランス人の多く(?)は不確かさのなかで「日本という時間」に確かななにかを感じているのだ、と。それがブームの根源にあるのだ、とも。

「日本という時間」、それは何だろうか。浴衣を着る時間、温泉に入る時間、暖炉の薪をながめながら日本酒を飲む時間、ホテルのギャラリーで焼き物を観る時間、などととりあえず言ってみるが、そのいずれでもない時間。海外の目からみた日本という時間、おそらく生きることに通底させるようななにものかとしての時間、通奏低音としての。日本人のぼくらはそのことにもう少し客観的かつ自覚的になることが必要なのかもしれない。

よしむね

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