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サムトの婆が帰って来さうな日

21 3 月 2010 No Comment

昨日の夜、ものすごく風が強かった。
遠野物語の「寒戸の婆」の話を思い出した。

黄昏に女や子供の家の外に出ているものはよく神隠しにあふことは他の国々と同じ。
松崎村の寒戸と云ふ所の民家にて、若き娘梨の木の下に草履を脱ぎ置きたまゝ行方を知らずなり、三十年あまり過ぎたりしに、或日親類知音の人々其家に集まりてありし処へ、極めて老いさらぼひて其女帰り来れり。
如何にして帰って来たかと問へば人々に逢ひたかりし故帰りしなり。
さらば又行かんとて、再び跡を留めず行き失せたり。其日は風の烈しく吹く日なりき。
されば遠野郷の人は、今でも風の騒がしき日には、けふはサムトの婆が帰って来さうな日なりと云ふ。

30年前に家出した娘が風の強い日に、老婆となってフッと帰ってきた。
しかし、そこにはもう彼女を迎え入れる場所はなかった。という素朴な語り口。
共同体の冷たさが風の冷たさとシンクロして、なんとも胸を締め付けられる話である。

まさむね

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