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新世紀エヴァンゲリオン(1997年)劇場版が提示した問題の有効性

3 8 月 2011 No Comment

「新世紀エヴァンゲリオン」テレビシリーズにおいて不完全のまま終わってしまった25話、26話を、一応完成させた形として発表したという『新世紀エヴァンゲリオン 劇場版「DEATH & REBIRTH シト新生」』と『新世紀エヴァンゲリオン 劇場版「Air/まごころを、君に」』を続けて観た。
両方とも1997年の作品である。
これによって、一応、エヴァンゲリオンは完結したということになるわけだが、残念ながら、僕には多くの謎が残った。しかも、具体的にどんな謎が残ったのかというのもよくわからない、いわゆる「何がわからないのかがわからない」状態で放り出されてしまったという状態である。

ただ、それらの謎、特に世界の謎の関しては、多くのエヴァ解説本などで、謎解きがなされているのだろうから、ここで更にもう一回観て、考えてみようという気にもなれない。
勿論、そういったものに対して、興味が無いわけではないが、それはそれなりにやっかいそうなので、とりあえず横に置いておき、僕がここで触れてみたいのは、エヴァが語ろうとしてる別次元の話である。
        ★
劇場版「Air/まごころを、君に」』では、人類補完計画という自己と他者が融合していく中に生じる様々な葛藤を、シンジとレイとの質疑応答と心象風景で描いていく演出は確かに引き込まれる。
シンジが子供の頃に味わった孤独、そして成長していく過程で何度も経験した他人からの拒絶。そして、それがいつの間にか、シンジというよりも、この映画を観ている僕ら(オタク層を意識か?)の嫌な経験を鏡のように見せられていく映像表現にすり替わっていく。
その時のレイとの応答はこんな感じである。

レイ:都合のいい作り事で現実の復讐をしていたのね。
シンジ:いけないのか。
レイ:虚構に逃げて真実をごまかしていたのね
シンジ:僕一人の夢をみちゃいけないのか
レイ:それは夢じゃない。それはただの現実の埋め合わせよ
シンジ:じゃあ僕の夢はどこ
レイ:それは現実の続き
シンジ:じゃあ僕の現実はどこ
レイ:それは夢の終わりよ

これは広い意味で、虚構の世界で遊ぶオタク批判になっているのだ。このあたりがこの「エヴァンゲリオン」の多層的なところであり、面白いところである。物語世界の救済、登場人物、特にシンジの内面の救済、製作者(特に監督の庵野氏)の自己救済、そして観客の救済、現実社会の救済というテーマがからみあっているのである。

ちなみに、これは蛇足であるが、この「虚構の世界から外に出よ」というメッセージは、同時期に放映された「少女ウテナ」のラストシーンにおける閉じられた学園から外部に出ようとするアンシーとウテナの疾走ともシンクロしているのであろうか。

もしかしたら、このエヴァにおける夢の終結宣言は、当時、バブル以降にダラダラと続いた偽りの繁栄(実際は、不良債権処理の先送りと赤字国債発行による景気維持政策)という外部を見たくない日本という空間そのものに対する警告だったのかもしれない。
そのように考えると、エヴァが、あの時代に発した警告は、あれから十数年、状況はさらに悪化し、311東北東日本大地震が発生し、いわゆるおぞましい危機(現実)が見え隠れする中で、いまだに現実を正視出来ずに、内部に閉じこもって夢を見続けようとする僕ら日本人に対しても、有効なのかもしれない。
最後のシーンで、人類補完計画を拒絶して、一個人の人間として敢えて世界に残ったシンジが、隣に寝ていた「最悪の他者」であるアスカの首を絞めて殺そうとするが、結局は何も出来ないその決断力の無さ、あるいは無様さは、現代(2011年)における僕らのみっともなさにも繋がっているのだ。

それが、根本的にウザいにも拘らず、依存しないと生きていけない他者との間で新しい社会を再構築するしか未来を持ち得ない僕ら、しかし、その道筋すら見えておらず、しかもその決断すら出来ない僕らに対して、この映画がいまだに、意味を持ち続けている理由ではないだろうか、と僕は(今のところ)考えている。

2007年に公開された新劇場版では、シンジ=僕らはどのように成長しているのだろうか。それを観るのが楽しみだ。

まさむね

この作品以外のアニメ評論は、コチラからご覧下さい。

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