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「となりのトトロ」と「千と千尋」における両親の落差

7 8 月 2011 One Comment

宮崎駿監督の「となりのトトロ」を観た。
今更と言われるかもしれないが、僕にとっては始めてのトトロである。
ご存知の通り、この作品は1988年の公開。トトロは、ジブリアメニのシンボルマークにもなっている。

内容については、今更、僕が特に語るのもおこがましいのであるが、演出的な話をすると、最初から、数分間、二人の少女が走り回るシーンのみで惹きつけてしまう、その力はさすがである。アニメだからこそ表現できる名シーンの一つだと僕は思う。

また、ストーリーは、エヴァ以降の様々なアニメの複雑な展開、伏線張りがされた作品に比べると、なんとシンプルなことであろうか。
トトロという不可思議な存在は不可思議なままでなんとなくあの森に居る。その「なんとなく、そこに居る」というスタンスのままで、子供達はトトロとの間に無防備なほどの信頼感を持っている。
このトトロと子供達との距離感は、懐かしくも、不思議なリアリティがあるのだ。そして、この不思議なリアリティへの感性こそ、日本人特有のものだととりあえず言ってみたくもなる。

さて、この作品には「都市伝説」があるというのを、観終わった後、Wikiで知った。
それはメイが、行方不明になった時に、本当は池で亡くなったのではないかという噂である。

実は、僕は、さつきが猫バスに乗ってメイを探し、メイを六体のお地蔵さんの場所で見つけるシーンを見たとき、直感的に、この都市伝説と同じようなことが頭をよぎってしまった。
しかし、僕の解釈はちょっと違う。

それは猫バスでさつきがメイをお地蔵さんのところでピックアップ出来たことによって、メイを冥土に行く瞬間に救ったという解釈である。
逆に言えば、六地蔵という村落と異界との境界の場所で、メイが、さつきによって見つからなかったら、もしかしたら、メイはお地蔵さんに守られながら冥土に行っちゃったんじゃないだろうか、ということも考えさせられた。
つまり、池に落ちて、一度死んだメイの魂を、この世の者ではない存在だけを乗せることが出来る猫バスが、あっちの世界の入り口から、こっちの世界に連れ戻したということなのである。
ただ、猫バスと一緒にいるさつきとメイは、だから、病院に居る母親には見えない。
しかし、母親は、その気配は、感じることが出来るのだ。
それより前のシーンで、さつきとメイとトトロのオカリナをなんとなく、聴くことが出来た父親の耳と合わせて、この両親の繊細な感性に対する表現はなんと慎み深いのであろうか。
あっちの世界にいる二人(さつきとメイ)を感じることが出来る両親、この両親の異界に対するスタンスも、先ほど述べたトトロという存在と、子供達とのスタンスの延長戦上にある不思議なリアリティに溢れたものだと僕は思う。

柳田國男ではないが、子供は、こっちの世界とあっちの世界を行き来できる存在であるということ、それは別の言い方をすれば、死にも近いという存在ということである。
現代のように医学が進歩した時代以前の子供達は、お地蔵さんの居る死の世界、トトロの居る不思議空間、そして現世を行き来できる存在だったということ、そして、勿論、現代の子供だってそんな存在の尻尾を持っているのだということが、この作品における宮崎監督の主題だと僕は読み取らせていただいた。

さて、僕は、この「となりのトトロ」を観て、別のことも考えた。
それは、この、子供達への愛情に溢れた両親(昭和20年代当時で30歳位)と、「千と千尋の神隠し」に出てくる千尋の両親(2000年で40歳位)との落差に関してである。勿論、この二つの物語をいくら宮崎作品だからといって並列に比べるのは乱暴であることを百も承知で言わせていただけるならば、これこそ、戦後・日本人の劣化を物語るのに、調度いいサンプルではないだろうか。

近くに居ながら、異界にも居る子供達の存在観を感じ取りながら、その世界に深入りすることも無く、暖かく見守るさつきとメイの両親と、自分勝手な振る舞いによって、無自覚な豚になってしまう千尋の両親。
僕ら、日本人の大人にとって幸せとは何なのか、価値とは何なのか、正だしい振る舞いとは何なのか、ということは、1988年の「となりのトトロ」と2001年の「千と千尋の神隠し」を並べて観ることによって見えてくるようにも思える。

まさむね

この作品以外のアニメ評論は、コチラからご覧下さい。

One Comment »

  • ちか said:

    トトロの暗い都市伝説を昨日知ったものです。知った時は、娘の大好きな映画がまさか、と、とてもショックでした。でもあなた様の解釈に救われました。ありがとうございます。また親としての在り方を考える機会を与えて頂き、ありがとうございます。

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