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「茄子 アンダルシアの夏」の歌の切なさに僕は涙した

25 8 月 2011 No Comment

先日、「夏のアニメ②「茄子 アンダルシアの夏」の甘く、切ないノスタルジア」というエントリーで、よしむねさんからご紹介があった「茄子 アンダルシアの夏」を観た。

そこによしむねさんが書かれている通り、「天変地異にかかわらずおそらく今後も変わらずにあるだろうとおもわれる人の故郷(土地)に対する愛憎混じった思いへの優れて詩的な描写」は素晴らしい。『攻殻機動隊』、『涼宮ハルヒの憂鬱』は、それぞれ別の意味で、100%の推薦はしづらいところであるが、このアニメは大丈夫。おそらく、中高年の方々にも抵抗なく見ていただけると思う。

内容に関しては、よしむねさんの評論を読んでいただければ、僕には足す言葉も引く言葉もない。このエントリーでは、少々、このアニメに対する雑感を述べさせていただければと思う。

舞台は、スペインのアンダルシア地方。ピレネー山脈より南はアフリカという言い方も出てくるが、そこはステップのような大地が広がる、不毛の地域である。アンダルシアと言えば、僕らの世代では、「アンダルシアの犬」というルイス・ブニュエルのシュールな映画を思い出される方も多いかと思うが、よく考えてみれば、あの映画は、あんまりアンダルシアには関係ない映画であった。ちなみに、途中に挿入されるアンダルシアを称える歌のシーンで一瞬、牧羊犬の絵が挿入される。

また、このアニメのタイトルにもついている茄子であるが、アニメを観る限り、茄子のアサディジョ漬けが、この地方の名物のようだ。そして、その漬物を食べる時には必ず、地ワインを飲まなければならない。ビールを飲むのは、この土地の法律違反wwなのだそうだ。
おそらく、この茄子と地ワインは、アンダルシアの象徴なのだ。それに対して、主人公のペペの所属チームのスポンサーでもあるビール会社の商品であるビールは他所を象徴している。流行の言い方をすれば、茄子と地ワインは、スローフードであり、ビールはグローバリズムの象徴なのである。


しかしペペはプロの自転車選手になって、この不毛の土地・アンダルシアから出てビッグになるためには、ビール会社に媚を売らなければならない立場である。しかし、そんな彼も祝勝会では、土地の名物として出された茄子のアサディジョ漬けを伝統的な食べ方で、美味しそうに食べるのだ。

先ほども、述べたが、「故郷(土地)に対する愛憎混じった思い」を、このアニメは本当によく表現している。おそらく、故郷に対する想いには全世界共通のものがあるのだろう。だから、僕らは、行ったこともないアンダルシアの物語でも心を打たれるのである。
かつては、どんな土地にも気のいい顔役がいた。このアニメではエルナンデスというおっさんがその役だ。彼は、アンダルシアを誰よりも愛している。そして、公道に、頑張れPEPEという文字を書いたり、ビールを飲みながら自動車を運転したりする。勿論、厳密に言えば、法律違反であるが、そんな法律よりも、エルナンデスの存在のほうがこの土地では偉大なのである。
また、この物語は、ある視点から見れば、兵役によって運命が変えられてしまう兄弟の話でもある。兄は兵役によって、自転車選手としての夢を絶たれ、弟は兵役に行っている間に、兄に彼女を取られる。その意味で言えば、このアニメはパトリオティズムのアニメではあるが、ナショナリズムのアニメではないとも言えるかもしれない。まぁ、物語というものは大抵の場合、そうではあるが...

ところで、このエルナンデスのようなおっさん、そして、そんなおっさんを許せるような「おおらかさ」は、現代日本にも、どこかに、まだ残っているのだろうか。

さて、僕がこのエルナンデスに親しみを覚えるのは、土地から出て行ったペペに対して、「あいつはこの土地を出て行った奴だ」と罵る一方で、その背中をそっと押してやるような優しさがあるからである。おそらく、心の中では、ペペのような若者が土地を去ってしまうことを本当に寂しく思っているのだろう。しかし、その寂しさを、歌でまぎらわせる。最後のほうで、車の運転席でビールを飲みながら彼が歌う「アンダルシアを称える歌」のなんとも切ないことか。

正直言うと、僕は、アニメ修行で、初めて涙が溢れてきた。

伝統的な共同体と若者との関わりという意味で言えば、先日観た「サマーウォーズ」とこの「茄子 アンダルシアの夏」とは一見近いように見える。しかし、「サマーウォーズ」における陣内家の強引な吸引力には居心地の悪さを感じた僕であるが、この「茄子 アンダルシアの夏」の地域共同体には心地よい温かみを感じた。そして、この共同体なら僕も入って行けそうな気がした。
この違いは何なのだろうか。少し気になる。

まさむね

この作品以外のアニメ評論は、コチラからご覧下さい。

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