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「東のエデン」 その物語構造の典型について

28 8 月 2011 No Comment

2009年春のクールに放映された「東のエデン」全11話を一気に観た。

ストーリーを簡単に説明する。
舞台は、現代日本。ある影の組織(アウトサイダー)から、100億円が電子マネーでチャージされたケータイ(ノブレス携帯と呼ばれる)を渡され、それを使って日本を救うことを義務付けられた12人(話の中ではセレソンと呼ばれる)の選抜者達。彼らは、それぞれの正義に従って、思い思いの行動を始める。ただし、これはゲームになっており、日本を救う前に100億円を使い切ってしまったり、何の成果も上げられなかったりすると、即、殺されるという。

ある者は、老人が安心して老後を暮せる相互介護病院を作る。またある者は、不公正な社会に絶望して、日本にミサイルを撃ち込んだ。そして、ある者は正義のために使わず、堕落していく者もいた。
主人公の滝沢朗もそんなセレソンの一人であったが、なんらかの事情により自らの記憶を消去していた。そのため、滝沢朗という名前も仮名だ。彼は、魅力的な、好青年であるが、一面女ったらしでもある。

そんな滝沢が、フとしたきっかけで咲という女子大生と出会い、そして、この物語が始まる...

上記だけを読んでいただくと、おそらく、壮大な社会派のアドベンチャーストーリーのようにも思われるかもしれない。確かに、その要素は十分だし、そうした話としても面白い。

しかし、この物語の背骨には、不幸な村にやってきたマレビト(異人、異形)が土地の娘と結ばれ、土地が豊かさを取り戻す話だと理解したほうがいいかもしれない。そうしたほうがわかりやすいと思われる。勿論、マレビトとは、滝沢朗であり、土地の娘とは咲である。

咲は、卒業を控えた春休み、サークルの友人達と一緒に卒業旅行にアメリカに来ていた。ニューヨークでは、自由の女神、セントラルパーク、グランドゼロなど、月並みの観光地を回るが、どこかに満たされない自分を感じ、一人でワシントンDCのホワイトハウス前に来ていた。
「みんな怒ってるかな」と彼女は一人つぶやくのだ。

彼女が所属してたサークル、「東のエデン」は起業を目的としたグループであるが、彼女は起業グループから離れ、義兄の推薦で内定をもらった会社に就職する予定でいる。
また、サークルの仲間の一人、大杉からアタックされている。
しかし、彼女にとって、そんな状況全てが、最悪ではないにしろ、どこか居心地が悪い。
と同時に、彼女は漠然と現在の日本にも、閉塞感を感じている。なんとかしなきゃと思いつつも、ただ状況に流される自分への自己嫌悪...

そんな時に、ホワイトハウスの前で出会うのが、滝沢朗である。
ホワイトハウスに向ってコインを投げているところを警察に見咎められたところを、その滝沢に救われるのだ。
おそらく、その瞬間に彼女は滝沢に恋をする(これは、僕の想像だけど、多分)。
そして、その後は、彼の世界にどんどん引きずり込まれていく。というか、彼女もそれを望んで、どんどん入っていく。

女性という生き物は、平凡で退屈な日常に突然、現れたマレビト(異人、異形)に弱い。これはおそらく、古今東西そうである。
日本の歴史を神話から紐解いていくと、例えばスサノウ、大国主命、ニニギノミコト、ヤマトタケル、源義経、小栗判官、坂本龍馬から、寅さん、裸の大将まで、旅人はみんな女性にモテる。
また、別角度から言えば、織田信長、遠山の金さん、新撰組から、GTOやルーキーズまで、日本人は伝統的に不良達も女性にモテる。

彼らは、平地の人には無い特別な魅力、容姿、情報、技術、明るい性格などといったパワーを持っているからだ。

そして、そのパワーによって、村は、トラブルを解決し、元気を取り戻す。しかし、平和が戻ると人々は、そのマレビトを疎んじるようになり、マレビトは追放されるのだ。
上記の例で言えば、ヤマトタケル、義経、龍馬は、殺され、寅さんは、いつも最終的には追放される(自ら再び旅に出る)のである。

この「東のエデン」も、こんなMCで始まる。

彼は仕方なく王子になった。
少なくとも私達の希望する明日は誰かが、王子という名の生贄になることでしかやって来ないと気づいていたから
だから、彼は不本意ながら王子であろうとした。この王様のいない国で...

僕ら、日本人の男子のほとんどが村人(定住民)のDNAをひいている。
だから、この「東のエデン」を、マレビト・滝沢にシンパサイズして観るよりも、村人・大杉の視点から観てしまう人も多いかもしれない。そうするとこの物語は最悪な物語になってしまうだろう。
圧倒的なパワーを持っている滝沢の前では、大杉はあまりにも惨めだからだ。
大杉は咲にメールや電話を頻繁に送る。優しい言葉をかける。しかし、そのほとんどが無視され、食事の誘いもあっさいブッチされる。しかし、咲は決して、大杉に謝罪することは無い。それはそうだ。彼女にとって、大杉からのメッセージは、現状の閉塞感の象徴だからだ。つまり、存在そのものが抑圧なのだ、勿論、悪い人じゃないんだけど...
それにしても、危機の時代、村人はいかに弱いことか。僕らは多かれ少なかれ、大杉に同情的にならざるを得ない。
何故か、もう一度、言うと僕らのほとんどが村人のDNAをひいているからだ。

一方、現状に不満を持っている女子達にとっては「東のエデン」は、シンデレラストーリーにも近い夢物語として消費されるだろう。

物語の冒頭では、全裸で片手に拳銃(モデルガン)、片手にノブレス携帯という姿で咲の前に登場する滝沢は、マレビトの資格十分だ。
彼は、謎の男だ。しかも、何故かとんでもなく裕福だ。そして、何よりも滝沢が魅力的なのは、彼はそういった世俗の価値観を超越しているからだ。
滝沢は、命をも惜しまず、他人助けに奔走する。つまり、セコくないのである。
この底知れない謎の裕福さ(≒胡散臭さ)と高貴な精神というのは、貴種流離譚における王子様の基本的パターンである。

それゆえに、咲にとって、滝沢は王子様になるのである。これでは逆立ちしても、大杉はかなわない。

そして、咲は、就職内定を取り消されるが、それは実は、彼女が無意識的に望んだことなのだ。
彼女は村に戻ってくる。村のために...というのは嘘で、滝沢とのかかわりを持ち続けたいからである。

さて、テレビシリーズでは、滝沢が、この国を他のセレソンが命じた60発のミサイル攻撃から救い、さらに「王子様」になることをジュイス(一人ひとりのセレソンにそれぞれつくコンセルジュ、実はAI)に依頼するところで、話は終わる。
だから、最終的に、滝沢が具体的に、どのように王子様となるのか、そして挙句の果ての生贄(スケープゴード)になるのか、といったところまでは描かれていない。

劇場版ⅠとⅡが結末だという。この続きは、それを観てから書いてみたいと思う。

まさむね

この作品以外のアニメ評論は、コチラからご覧下さい。

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