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朝青龍の引退は誠に残念だった。
真相究明をすべきという声、力士を教育システムが壊れているのではないかという声、引退では甘い!解雇すべしという声、大相撲はスキャンダルが多すぎという声、それらはそれぞれ正しいのだろう。
しかし、一人の偉大な横綱の相撲がもう見れなくなるという「残念」に比べればどうでもいいような話に感じられる。
もともと、大相撲という興行は、人並み以上に体が大きく、野望に満ちた田舎の暴れん坊達を江戸という大都市に集めて、見世物として闘わせることから始まっている。そんなに行儀のいいものではなかったはずだ。例えば、歌舞伎「め組の喧嘩」を思い出しても、そのことは明らかだ。ご存知の通り、「め組の喧嘩」は、文化文政時代に起きた、江戸火消しと力士との大喧嘩だ。火事と喧嘩は江戸の華という言葉もあるが、当時、江戸の庶民が夢中になった面白い事件だったのだろう。
その意味で、朝青龍だけが突然変異のように、ひとり、粗暴だったわけであるはずはない。
大相撲という興行が一攫千金の夢の実現の場であったり、喧嘩やスキャンダルで成り立ってきたという隠しテーマも含め、朝青龍は、いろんな意味で、大相撲の伝統を受け継いでいるのだ。僕はむしろ、大相撲という組織が、江戸以来の伝統に盾に、世間の価値観を押し返せなかった点が残念でならない。もっとも、内舘牧子が言うように、大相撲というものは常に体制や時代の価値観と添い寝している存在という一面もあるのだが...
いずれにしても、あの朝青龍のヤンチャな表情、豪放磊落な立ち振る舞い、苦境から何度も立ち直ってきた精神力、ここ一番で見せた集中力、そしてどんな時でも相手を攻めるその姿勢はすばらしかった。現在の日本人が失ってしまった、彼のヤマっ気を僕らは決して忘れることがないだろう。
今後、本場所中の朝の5時に六本木で泥酔してしかも優勝してしまうような横綱は、もう出ないかもしれない。
まさむね
政治, 相撲/プロレス/格闘技 »
先日のエントリーで、小沢一郎は辞職して、ただの釣り好きの親父になるべきだということを書いたが、僕は一方で、彼にはしぶとく民主党幹事長、あるいは代議士を続けてもらいたいとも思っている。
勿論、それは僕が彼の無実を信じているなどということではない。それはいずれ明らかにされる、あるいは捏造される、舞台の向こう側の話だからだ。
最近、政治のニュースを見て、僕が不自然に感じるのはなぜ彼らはあんなにも毎日、闘っている、あるいは闘っている芝居をしているのだろうかということ。
そういえば、僕らの日常にはそういった戦いというものがない。ビジネスの世界でもライバル社と戦うのではなく、W-inW-inの関係を築くというのがブームなのかもしれない。微妙にこのW-inW-inという言い方が気持ち悪いのは気のせいか...
さて、おそらく、周囲の人に、「あなたは今、何と戦っていますか」とたずねてもほとんどの人は、何も答えられないだろう。あるいは、自分と戦っているといういうだろう。
ただ、自分と戦っているという人はおそらく、何も闘っていない人だ。
勿論、僕もそうだ。何とも自覚的に戦ってはいない。残念ながら。
話を戻す。僕が小沢一郎に辞職してもらいたくないのは、”権力にしがみつく老醜”というのも見世物として好きだから。それはちょうど、70年代にあった全日本プロレスのチャンピオンカーニバルでアブドーラ・ザ・ブッチャーが、優勝トロフィーを俺のものだとばかりに抱きかかえて舌なめずりをしたあのシーンを思い出す。
権力、名誉というものに固執する醜い男を表現することによって、逆に普通の庶民を精神的に安堵させるというのも、もしかしたら政治家の大事な役割かもしれない。
まさむね
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千代大海が引退した。
最後の取り組みは、魁皇との一番だった。転がされた時に、引退を決意したらしい。
確かに、ここ数場所、千代大海は負けても苦笑いをする表情が目立った。あーっ、もダメだという表情だった。
もう、気力も限界に達していたのだろう。
素直に、ご苦労様と言いたい。そしてありがとうと言いたい。
思えば、これで、突き押し一本槍の関取はいなくなってしまった。
僕は、相撲が異種格闘技戦だと思っている。その意味で、千代大海の存在は重要だったのだ。
同時期、一緒に相撲を取っていた同僚達も寂しかったことだろう。
千代大海が引退した日、大関は全員負けた。
これも相撲のいいところである。
まさむね
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内藤大助VS亀田興毅のWBC世界フライ級は瞬間視聴率が50%超えたらしい。
日本人の二人に一人が見たということだ。
勿論、僕もチャンネルを合わせた。「坂の上の雲」をあきらめたのだ。
結果として12ラウンド亀田の判定勝ち。順当な結果だったと思う。
二人が入場して、リングに上がった瞬間、若干入れ込み気味な内藤に対して、亀田はあくまで冷静だ。今までの亀田とは違う。肉体も以前より締まっている。明らかに、この試合、亀田は勝つことだけを目指して調整してきたことがわかった。
プロボクシングというスポーツは、他のどんなスポーツよりも、冷静さが重要なスポーツである。ただ、相手を倒すという目的のため、純粋に機械的な体を作る。
そして、より冷静に己の動きを制御しえたものだけが勝利を得ることが出来るのである。
しかし、一方で、彼らはプロであるがゆえに、物語を身に纏う必要があるのだ。
多くの場合それは「成り上がりのストーリー」である。
ところが、周りが物語を彼らに纏わせれば纏わせるほど、機械としての肉体の動きは正確さを欠いてしまう。だから、そういったガチガチのストーリーファイトは得てして名勝負にはならない。物語に感情を入れ込むことは、機械の性能を、確実に鈍らせるからである。
例は悪いかもしれないが、昨年のオリンピックの野球で、無様な敗退を喫した星野JAPAN。僕は、星野の物語体質が日本を勝利から遠ざけたと思っている(「星野監督のドラマ体質と残酷な五輪」)。「ミスをしても使い続ける義理堅い男の中の男」という、星野的物語が「真剣勝負」の場では、いかに邪魔なものだったのかは、その半年後、原が反物語的=機能的な采配で、WBCでの優勝をもたらしたことによって証明されたのであった。
プロボクサーはだから、いかに観客が喜ぶような物語を演じるかというテーマを持つ一方で、いかに機械になりきるかという、ある意味、相反するパフォーマンスを同時になしえなければならない過酷な存在なのである。
さて、話を戻そう。亀田VS内藤といえば、誰もが認識している大きな背景としての物語は、単純に言えば、亀田は大阪・西成の貧しい父子が裸一貫から立ち上がる話だし、内藤は北海道の田舎町で母子家庭として育ったいじめられっ子の逆転劇だ。
しかし、今回のタイトルマッチ。物語は次の次元に進んでいる。そして、その新たな次元での物語は明らかに亀田に有利に進んだのだと、僕は思う。
おそらく、今回の亀田の勝因は、この世界戦における彼の物語が、父離れという逆に脱物語的な物語であったことである。
リングに上がった瞬間から彼が見せた、今までとは違った冷静な「亀田興毅」。試合が始まっても、欲望のおもむくままに攻めるのではなく、相手の隙を見てはカウンターを狙うという、最大限の効率を狙った機械的なムーブを続けたのであった。
それは亀田父直伝の野性的な雰囲気とは違うストイックな姿である。おそらく、もともと聡明な亀田興毅だからこそ、父離れ=成長という物語と、禁欲的な機械という最高のパフォーマンスを意識下で一致させることが出来たのだ。
一方、内藤大助もよく頑張った。35歳という年齢を考えると、おそらく精一杯の試合だったのではないか。しかし、彼が持ってリングに上がった物語は、残念ながら、「この年齢で、力の限り闘うがけっぷちの男」という一歩間違えれば、敗北を呼び込んでしまいかねないような危うい物語であったことも事実だ。
試合前の切羽詰ったような表情、そして、試合中に、リスクの高いアッパーカットなどを見せるたびに、僕はそれでも最後まで内藤の「奇跡」を信じ続けようと思った。時に、物語を、圧倒的に超える瞬間を持つのもボクシングというスポーツだからだ。
しかし、試合は終わった。
残念ながら、最後までその瞬間は訪れなかった。
勝者と敗者は明らかだった。
亀田はリングにうつぶせになって泣き、内藤は、花道で頭を下げた。
試合の緊張感があまりにも高かっただけに、二人の素が出たのだ...というのは本当だろうか。
もしかしたら、亀田はやんちゃな少年を、内藤は内気なおじさんを再び演じ始めたのかもしれないと僕は思った。
まさむね
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九州場所の優勝が千秋楽を待たずに白鵬に決定した。
後半、ライバルの朝青龍は、怪我もあって、優勝争いから脱落。昨日(14日目)の相撲は無残な感じだった。上半身はテーピングだらけ、しかも、その表情からは気迫が感じられず、琴欧洲の寄りにあっさりと土俵を割った後には苦笑いすら見せていた。
こんな横綱は見たく無い。誰もそう感じた瞬間だ。
ヒールは圧倒的な迫力と強さがあるからこそのヒールである。「もう引退も近いのか」そんな嫌な予感すら感じさせた横綱の表情であった。
確かに白鵬の強さは圧倒的だ。今年は今日の勝利で85勝(年間最多勝記録樹立)だ。6場所全てが14勝以上というのはとてつもない記録ではないか。もし、白鵬が日本人だったら、それこそお祭り騒ぎになったはずだ。
勿論、彼の大横綱としてのたたずまい、風格は認めるところではあるが、いかんせん大向こう受けする”華”が無いような気がする。
おそらく、白鵬にスペクタクルアスリートとしての”華”が出てくるには、若き日本人ライバルの登場が不可欠であろう。その時、彼は最高の輝きを見せるに違い。
しかし、残念なことに、白鵬のライバル足るべき若き日本人関取の人材が不足している。しかも、かつては、「相撲どころ」といわれた、北海道、東北、そして関東の人材が不在なのは気になるところだ。
元々、相撲とは、出身地方の個性を都に集めて、お上の前で闘わせるという、いわゆる「まつろわぬ」民の服属儀式的なところがあった。
まつろわぬ民の本場が、かつての「蝦夷の地」北海道、東北、関東から、海外に移ってしまったのだろうか。ここに若干の寂しさを感じざるを得ない。
そういえば、自分の記憶の中のかつての横綱達を思い出してみると、大鵬(北海道)、栃ノ海(青森県)、北の富士(北海道)、北の湖(北海道)、2代目若乃花(青森県)、隆の里(青森県)、千代の富士(北海道)、北勝海(北海道)、大乃国(北海道)、旭富士(青森県)等、北海道と青森県出身の力士が目立つ。しかし、現在は、北海道出身の関取は不在。青森県出身者は数は多いものの、安美錦(粋な浮世雲)、武州山(くたびれた巨漢)、岩木山(顔面絶壁:左画像)、高見盛(永遠の少年)、将司(天下の塩巻き男)、海鵬(眉毛横綱)と、強いというよりもどちらかといえば個性派、それこそ「まつろわぬ」風貌が多いのは僕の好みだが、ほとんどが30歳代なのだ。ちなみに、括弧内は、それらの青森出身関取達に愛情を込めて僕が勝手につけたニックネームである。
さて、それはともかく、若い関東以東の関取の不在に関して、下記のように表にしてみると残酷にも、さらにわかりやすい。両方(関東以東、20代)の条件を満たしているのが幕内上位では稀勢の里しかいないのだ。さらに、以前、「何故、日本人横綱は出なくなってしまったのか」というエントリーで、「高校を卒業しているようじゃ横綱にはなれない」というような事を、今までの横綱の学歴を踏まえて書いたが、そういった観点からも、茨城県出身、まだ24歳、そして中卒の稀勢の里がいかに貴重な存在かわかってもらえるかと思う。
番付
四股名
年齢
部屋名
出身地
学歴
20代
関東以東
横綱
朝青龍
29
高砂部屋
モンゴル
高校中退
★
横綱
白鵬
24
宮城野部屋
モンゴル
中学卒
★
大関
琴欧洲
26
佐渡ヶ嶽部屋
ブルガリア
高校卒
★
大関
琴光喜
33
佐渡ヶ嶽部屋
愛知県
大学卒
大関
魁皇
37
友綱部屋
福岡県
中学卒
大関
日馬富士
25
伊勢ヶ濱部屋
モンゴル
中学卒
★
大関
千代大海
33
九重部屋
大分県
中学卒
関脇
把瑠都
25
尾上部屋
エストニア
高校卒
★
関脇
鶴竜
24
井筒部屋
モンゴル
中学卒
★
小結
稀勢の里
24
鳴戸部屋
茨城県
中学卒
★
★
小結
豪栄道
23
境川部屋
大阪府
高校卒
前頭1枚目
豪風
30
尾車部屋
秋田県
大学卒
★
前頭1枚目
安美錦
31
伊勢ヶ濱部屋
青森県
高校卒
★
前頭2枚目
琴奨菊
25
佐渡ヶ嶽部屋
福岡県
高校卒
★
前頭2枚目
時天空
30
時津風部屋
モンゴル
大学卒
前頭3枚目
栃煌山
22
春日野部屋
高知県
高校卒
★
前頭3枚目
武州山
33
武蔵川部屋
青森県
大学卒
★
前頭4枚目
北勝力
32
八角部屋
栃木県
中学卒
★
前頭4枚目
岩木山
33
境川部屋
青森県
大学卒
★
前頭5枚目
豊ノ島
26
時津風部屋
高知県
高校卒
★
前頭5枚目
垣添
31
武蔵川部屋
大分県
中学卒
★
さて、今場所に話を戻そう。先ほども書いたが、白鵬が14日目で優勝を決めてしまった今場所、正直言って盛り上がりには欠けた。僕の好きな把瑠都や日馬富士も14日目でようやく勝ち越すという体たらく、期待の稀勢の里をはじめ、把瑠都以外の関脇、小結は全員負け越してしまった。さらに、千代大海は早々と休場してしまったし、今場所、幕の内在位の記録を作った大関の魁皇もまだ勝ち越せていない。
ようするに上位で元気だったのは白鵬だけという状況では面白くなりようがないではないか。
これは白鵬を褒める反面、他の関取のふがいなさを指摘すべきなのかもしれない。
ただ、僕的に、唯一の今場所の収穫は、栃の心の大勝ちだろう。千秋楽を待たずに12勝もしているのだ。しかも、昨日(14日目)は、あの翔天狼を怪力で高々と吊り上げての勝利。朝青龍、把瑠都につぐ「つり技」系関取の誕生かと僕の胸を躍らせてくれた。
彼がいわゆる相撲を覚えてくれば、さらに上位での活躍が期待できる。くれぐれも露鵬や白露山のようにはなってほしくない、絶対に。
最後の話題はやはりこの人、山本山だ。今場所は大負けの上、14日目にしてインフルエンザで休場してしまった。250Kgの巨体が発熱で唸っている姿を想像するのは、若干ユーモラスではあるが、そんな事を言っている場合ではない。来場所は十両からの出直しだ。埼玉県出身でまだ25歳、僕の期待は大きい。
まさむね




